この文章について:
今月読んだ英語記事の翻訳(要約)。英文内容の把握、文章の理解といった、読解力の向上を目的としたもの。
今月は Tech 系の記事を中心に要約作業を行った。先月に引き続き Covid-19 に関連するニュースが多く目に留まった。中でも監視社会に関するトピックーーソフトウェア・ハードウェア、またその他サービスによるユーザーの監視ーーに関して警笛を鳴らすニュースが増えてきたように感じる。政府によって一度確立された監視システムは危機が去った後にも残り続ける。これは 911 の際に明らかとなった。ウイルスに対する恐怖心だけでなく、その後に訪れるかもしれない監視社会に対して危機感を抱いている人が多いようだ。
- Wechat が監視していること
- Kindle はあなたを監視しているかもしれない
- モロッコ政府が対コロナウイルスのためにドローンを導入
- social distancing 確保のため、ロボット犬をシンガポールが導入
- オンライン投票の危険性を専門家が指摘
- 対コロナウイルスに必要な情報を AI が見つけ出す方法
- 人気のバーチャルダンスパーティーの裏側には何が?
- ソフトウェアの欠陥の発見においては、ソーシャルメディアの方が official(NVD)よりも早い
- ミュンヘン政府が Windows から Linux へと戻した理由
- 都市の近代化を予想した機械学習モデル
- タスマニアデビル保護のためにクラウドを活用
- 女性初の MarconiMarconi 賞を Andrea Goldsmith が受賞
- 喫煙習慣のモニタリングデバイス PuffPacket
Wechat が監視していること
2020 年 5 月 7 日 Citizen Lab は、WeChat 上でシェアされている画像やファイルについて、その監視アルゴリズムのトレーニングに関する説明を行った。
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WeChat の監視システムは全てサーバーサイドで行われる。ユーザーがメッセージを送信した際、もう一方のユーザーに配信される前にサーバー側で除外ワードをはじく。ワードが除外された場合も、ユーザーに対して除外に関する通知は行われない。
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China-registerd アカウントのみ Wechat の監視対象となる。Non-China-registerd アカウントに関してはその限りでない。
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とはいえ、Non-China-registerd アカウント間でのみのやりとりについても監視が行われたという事実がある。
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送信された画像は blacklist 画像と比較され、その一致率が高い場合は Wechat に保存される。以後、その画像自体も blacklist 画像として、比較の指針として使用される。
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Non-China-registerd によるメッセージのやりとりも、Wechat の監視機能のトレーニングに役立っている。
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Wechat 以外の SNS についても同様の監視の仕組みがないとは言い切れない。しかし Wechat においては、特に強く「政治」に関するコンテンツに対する監視、またそのアルゴリズムのトレーニングについて、違いがみられる。
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中国国内におけるコンテンツの規制法はとても曖昧なものであり、企業はあいまいな基準の中で監視システムを実装する必要がある。国による基準の不明確さが、、物事の複雑さを生み出している。
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Wechat が監視している内容について、ユーザーに適切に知らされていないことがわかった。法律の管轄地域によって判断は異なるが、それとは別に Google や Apple をはじめとする App Store によって規制されることもあり得る。
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COVID-19 によるパンデミックに際しても、Wechat は国内の(ウイルスに関する情報やユーザーの場所について)情報の収集やメッセージの規制を行っていた。それに対して今回の調査では、国外のユーザーに対しても監視対象となっていることが判明した。
- In response to this failing, privacy regulators in some jurisdictions may have grounds to fine the company for misleading users.
Kindle はあなたを監視しているかもしれない
Reading in the Panopticon: Your Kindle May Be Spying on You, But You Can’t Be Sure
Kindle にはハイライト機能が存在し、これは電子書籍の内部の任意の一文をハイライトとしてメモしておくことができる機能だ。また、他社のハイライトを参照することもできるわけだが、この機能はどのように提供されているのだろうか。
Amazon の電子書籍を購入の際には、pripacy policy が提示されるが、この文章の中にデータ収集に関する文面は存在しない。またデータの一部を使用する文面は見られるものの、抽象的な説明しかなされていない。
初めて Kindle がリリースされた年、2006 年に Amazon は特許を取得しているが、監視に関する情報は、この条文の中に含まれていない。新たに 2009 年に取得した特許においては、ユーザーによって作成された「注釈情報(annotation information」を収集する旨が記載されている。データの測定には Kindle 内部の光センサーや加速装置が使用され、例えばユーザーが歩行中であること、飛行機で移動中のこと、ナイトクラブにいることなどが推察可能だ。
これらの情報は広告業者やクラッカーの間にも広まっているのが自然だと考えるべきだ。
また、DMCA(デジタルミレニアム著作権法, Digital Millennial Copyright Act)の観点からすると、仮にユーザーが Kindle 内の監視機能をオフにした場合、DMCA に反することになる可能性がある。つまり Kindle においては、制限のないデータ収集が政府によって許可されている。ユーザーにとってはどうすることもできない(take-it-or-leave-it)のだ。
Kindle のデータ収集には条件・規制を設けるべきだ。例えば、どのようなデータが収集されているかをユーザーに提示し、許容に対する権限を認めるべきだ。他の例としては、ユーザーに追加のプランを提示し、追加料金によるデータ収集を避けるような選択肢を与える方法もある。
ユーザーに選択肢はなく、場合によっては Amazon によって訴えられる可能性すら存在する。本当の意味で Kindle がユーザーの行動を「監視」しているかどうかは定かではない。しかし大企業の強い力に支配されないだけの選択肢があってもよいのではないだろうか。
- a country’s judicial system
モロッコ政府が対コロナウイルスのためにドローンを導入
Morocco launches fleet of DJI drones to tackle coronavirus from the sky
厳しいロックダウンの状況下にて、モロッコ王国では熱源観測や消毒液の散布のためにドローンの導入が増加している。その多くは中国企業である DJI の製品だ。
これまでもモロッコではドローンの導入を行ってきたが、今回のパンデミックを受け、その導入はさらに加速した。ドローンの採用により、市民の屋外での不審な行動や、バルコニーや屋上での密接行動に対しても警告・防止の効果を発揮している。
モロッコ以外の多くの国でもドローンは導入されている。しかしドローンの使用に関する法整備は進んでいない国も多く、高性能のカメラやスピーカーを装備したものの使用に対する非難も存在する。モロッコ政府はこれに対する意見は行っていない。
導入の背景には、警察官の負担軽減の目的がある。モロッコではコロナウイルスに対して早い時期から厳しい制限を行っており、これには移動の制限、門限、マスク着用の義務などが存在する。これらを守らなかった場合は、1~3 か月の懲役、および 125US ドルの罰金が科せられる。3/15 から 4/30 の間におよそ 50,000 件もの事案が発生している。
social distancing 確保のため、ロボット犬をシンガポールが導入
Singapore deploys robot ‘dog’ to encourage social distancing
2020 年 4 月 8 日金曜日、シンガポール政府はロボット犬を、とある公園に導入することを発表した。
ロボット犬は公園をパトロールし、social distancing を保つために事前に録音されたメッセージを発する。ロボット犬はカメラを搭載しており、周囲の環境を読み取ることで、公園内に存在する人間の数を推測する。カメラには録画機能はなく、また特定の個人に関するデータの収集も行っていない。
オンライン投票の危険性を専門家が指摘
Risks Overshadow Benefits with Online Voting, Experts Warn
COVID-19 の影響を受けて、多くの州がオンライン投票を開始している。しかし多くの専門家によって、違法なマルウェアに対する危険視がなされている。
米国においては、複数の州(ニュージャージー、デルウェア、ウェストヴァージニア)にてオンライン投票が開始されている。
セキュリティホールの専門家であるスタンフォード大学の David Dill 教授によれば、全てのデバイスおよびソフトはマルウェアの危機から逃れることは不可能であり、投票行為が改ざんされるリスクは逃れられないと発言している。
同様に複数の機関(FBI, EAC, NIST, CISA)からオンライン投票に対する警告がなされている。
Verified Voting の代表である Marian Schneider は民主主義のプロセスに重大な影響を及ぼしかねないと公言している。また彼女は投票結果の改ざんだけでなく、選挙結果に対して国民の疑念が生まれることを危険視している。
Association for Computing Machinery の前代表である Barbara Simons が述べるには、オンライン投票のアイデアは 1990 年代から存在し、かついずれのアイデアも悪手だと結論付けられてきた。オンライン投票の代わりとなる方法―例えばメールによる投票―は他にも多く存在するため、彼女はそれらの案も検討すべきだと述べている。
対コロナウイルスに必要な情報を AI が見つけ出す方法
How A.I. Steered Doctors Toward a Possible Coronavirus Treatment
様々な化学分権の中からウイルスに関するものを洗い出すために AI 技術が使用されている。
例えば、baricitinib と呼ばれるリウマチの薬は、コロナウイルスに効果がある可能性があるとして、trial として治療に使用されている。このように、ウイルスの伝搬てやワクチン開発について調査を進めるため、必要な情報を引き出すために多くの科学者が注目している。
baricinitb は身体の不慮の免疫システムを防止する役割を持っており、これがリウマチや H.I.V.による身体組織の損傷に対して有用だとされている。
本来これらの AI 技術は新薬の開発に用いられたものであり、ウイルスに関して使用されるのは初めてだ。
universal language model と呼ばれるシステムは、数千の本や、Wikipedia などのデジタルテキストをもとに作られたシステムだ。これを利用して、数百万のドキュメント検索を行っている。このシステムは Google の chatbot システムの改善にも使用されている。
人気のバーチャルダンスパーティーの裏側には何が?
Virtual dance parties are popular. What’s behind their rise?
パンデミックの栄養により多くのアクティビティが制限されているが、インスタや Youtube 上でのオンラインレッスンや、Zoom を使用したダンスセラピーといったことが行われている。
4/29 の International Dance Day は、ダンスをわうため、またダンスの社会的、教育的重要性の認知のために、ゆねすこによってサポートされている。
ソフトウェアの欠陥の発見においては、ソーシャルメディアの方が official(NVD)よりも早い
Social media faster than official sources to identify software flaws
調査によると、ソーシャルメディア上で話題に上がる欠陥のうち、その四分の一については、National Vulnerability Database (NVD)に掲載されるよりも平均して 90 日早く、すでにソーシャルメディア上で議論されていることが判明した。
これら欠陥が見つかるのは、多くの場合は Github 上であり、Twitter や Reddit に議論のが移っていく場合についても、Github での欠陥の発見を受けてからのことが多い。
一例として、Adobe Flash の脆弱性について取り上げた CVE-2016-4117――CVEs: Common Vulnerabilities and Exposures Entries――では、NVD 上での発表よりもおおよそ一か月早く、Github, Reddit, Twitter 上で話されていた。
Social cybersecurity はとても危険な脅威であり、これらについて議論するにふさわしい場所を見つけ出すことは大切であるとしている。
ミュンヘン政府が Windows から Linux へと戻した理由
Linux not Windows: Why Munich is shifting back from Microsoft to open source
ミュンヘンにて新しく選出された政治家は、Microsoft Office のような製品に変わりオープンソースのソフトウェアを使用することを決定した。これは技術的、経済的な側面からの決定だとしている。
ミュンヘン政府では 2003 年当時―Windows NT 4.0 のサポート終了のタイミング―から Linux の導入を進めることを宣言しており、この計画は LiMux(Linux and Munich) というコードネームで呼ばれ、世界的に見ても斬新な計画であるとされた。2013 年にはミュンヘン政府における 8 割のコンピューターが LiMux が使用可能な状態にセットアップされていた。
しかし 2017 年、ミュンヘン政府は Microsoft Germany 本社のミュンヘン移転を受けて、LiMux から Microsoft 製品へと戻すことを決定した。
LiMux の使用に再度戻すという今回の宣言の結果、ミュンヘン内の IT 企業は、コストや時間の浪費に対して不平を漏らしている。また今回の宣言に対して、「技術的な側面を無視した政治的な決定だ」という批判も上がっている。
都市の近代化を予想した機械学習モデル
Delware 大学のデータサイエンティスト Jing Gao と Denver 大学の Brian O’Neill は、今後の 100 年間で国土における都市の領域がどのように拡大、成長していくか、その変遷を予想するモデルを作成した。
この「都市の成長」に関するコンセプトは、urbanization と呼ばれている。
同一の国においても、地域や州ごとによってその成長は全く異なったものになる。これらの予想は、5 月 8 日に出版出版される Nature Communications 誌に発表された。
Gao と O’Neill はデータの解析に際して、15 のデータセットを活用した。これには過去 40 年間における都市の変化を撮影した衛星写真などが含まれる。都市化に際しては、その度合いをレベルで3段階に分けられる。これまではローカルなレベルでの分類が困難であったが、このデータ活用を通して可能となった。
地球を 375 のエリアに分割し、それぞれにモデルを適用した後、すべてのデータを統合した。その結果、地球全体における今後 100 年間の都市は、1.8~5.9 倍に拡大されることが判明した。ただしこの結果は、これまでの社会的トレンドを前提に推測している。例として、国策として「持続可能な社会」を目指すかどうかによって、1 結果は異なってくる。
国策、気候変動、国民の行動といった多くの要因が与える影響は大きい。しかし以後 100 年において、すべての地域で都市化が進行することは間違いないとしている。
タスマニアデビル保護のためにクラウドを活用
Australian researchers tap cloud to save the Tasmanian devil
野生動物保護活動の一環として、シドニー大学の調査チームが遺伝子調査のために AWS を活用している。
過去 200 年の間にオーストラリアの野生動物は絶滅へと近づいて行っている。絶滅の危機に瀕した動物の調査速度向上に向けて様々な活動が行われている。
ある生物における遺伝子の機能やその位置情報を特定することはとても困難だ。無数のパズルのピースの中から、正しいピースを選び取るような作業だ。
これに対して調査チームは、2019 年から trial として AWS tap cloud-based service の使用を開始した。調査チームは 12 週間にわたり、50 のデータパイプラインによる解析を行った。
パイプラインによる解析には 1 週間の時間がかかり、また事故により作業が中断した場合には初めから解析しなおす必要があった。これらの原因の一つにマシンスペックの問題があり、これはクラウドを活用することで解決ができるようになった。
調査チームは今後、タスマニアデビルの他に 40 から 50 の絶滅危惧種について調査を行う予定だ。また遺伝子データの一部を S3 バケットにて公開することで、世界中の研究員が使用できるよう計画している。
- The diseased population in mainland Tasmania receives new genes
女性初の MarconiMarconi 賞を Andrea Goldsmith が受賞
Marconi 賞は、ラジオの発明家である Guglielmo Marconi を称える賞である。Goldsmith 氏は wireless communications 分野での業績を評価され、賞金の$100,000 を受け取った。
「現在となっては数十億の人間が当たり前に使っている技術。wireless networking の分野に対する Andrea の功績はとても大きい。」と元スタンフォード大学の教授は語っている。
彼女の理論は、位置情報、信号の強度など既存の技術を大きく変化させた。
この受賞を受けて、Andrea は Princeton 大学の Engineering 学部長となる予定だ。
- Goldsmith is donating her $100,000 award to the Marconi Society to start an endowment to fund technology and diversity initiatives.
- Goldsmith, who will become dean of the Princeton University’s School of Engineering
喫煙習慣のモニタリングデバイス PuffPacket
Device tracks vaping habits to better understand use
Cornell Tech チームが e-cigarrete の喫煙習慣を観測するデバイスを開発した。このデバイスを e-cigarrete に装着することで、喫煙者はニコチンの吸引量を知ることができ、また喫煙を行った場所や時間帯の計測も可能にする。
これまでは e-cigarrete 利用者の情報がほとんどなかった。PuffPacket の開発によって多くの情報収集が可能となる。時間、場所、コンテキストといった情報から、喫煙のトリガーを推測可能だ。もちろんこの集計は、喫煙者自己申告によって集められることとなる。
e-cigarrete は、通常のタバコと比較して安全であるということをうたい文句としている。そのため過去 4 年間で 21 億ものうりあげが伸びた。その多くが、高校生、中学生だ。
PuffPacket には bluetooth が内蔵されており、喫煙者のスマートフォンと連携することで、吸引したニコチンの情報、吸引時の喫煙者の情報などが送信される。
誰もが PuffPacket を活用できるようにと、このデバイスはオープンソース化されている。
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